1棟丸ごとシェアオフィス・コワーキングスペース「enspace(エンスペース)」ー東北最大級のビジネスの拠点へー
2018年6月に東北最大級のシェアオフィス・コワーキングスペースとして登場した「enspace(エンスペース)」。東京のIT企業である株式会社エンライズコーポレーションが東北6県のハブ都市である仙台に注目し、ビジネスが繋がり、成長する場としてオープンしました。オープンからの1年半の歩みと今後の展望について、Community Managerの可野 沙織さんにお話を伺いました。
目次
enspace(エンスペース)
場所:〒980-0803
宮城県仙台市青葉区国分町1-4-9 enspace
TEL:022-302-6422
URL:enspace公式ホームページ
施設概要
■立地
enspaceは晩翠通りや肴町公園の近くに位置し、目の前には以前、KURASHITOでも取材させていただいたカフェNorthfields(ノースフィールズ)があります。他にもSENDAI COFFEE STANDや道元坂などの個性的なお店が多く集まるエリアです。
enspaceのコンセプトは「Glocal Factory」。Global(世界)とlocal(地方)の造語です。既存ビジネスをスケールしたい、新たなビジネスを創出したい、地域(local)を活性化していきたい、全国・世界(Global)に活躍を伸ばしたい……そんな人たちがコラボレーションできるクリエイティブな“空間”(Factory)を提供していく、という想いが込められています。
■フロアガイド
enspaceは7階建ての建物で、各フロアはコワーキングスペース、個室オフィス、会議室など様々な用途のスペースで構成されています。
■月額会員について
月額会員は、①フリーデスク会員、②個室オフィス会員、③固定デスク会員の3種類が用意されており、ビジネスの規模に合わせて最適なプランを選ぶことができます。また、学生の方向けの「Student Plan」という割引制度もあるそうです。
月額会員になるとオフィスを利用できるだけではなく、以下のような特典も。
①会議室利用、1日2時間無料
②enspaceビジネス交流会が会員価格にて参加可能
※懇親会は別途参加費が必要
③会議室利用は月額会員種別に応じた割引額にて利用可能
④O₂ enspace(酸素ボックス)使い放題
■サポートサービス
起業して社員がいない、という方へ便利な多種多様なサービスが揃っています。
事務サービス:領収書などの整理や企画書作成、宿泊の手配といった、総務部のような役割
販促サービス:チラシや動画の作成、SNSの運用代行などの広報部のような役割
ITサービス:手作業の仕事を自動化してくれるアシスタントのような役割
他にもコミュニティー、起業・創業支援を行ってくれるサービスも。独自のコミュニティ「enspaceビジネス交流会」や仙台市と取り組んだ支援を受けることもできます。
1F:ガレージ、受付
■1階|ガレージ
最近、完成したというガレージ。イベントなどでも使うことができるそうなので、普段とは違った雰囲気のイベントを開くことができそうですね。
■1階|受付
1階の受付では、スタッフの方が常駐しています。モニターには当日のイベントや会議室の情報が表示されており、右側の壁には周辺のお店情報などが掲示されています。
2F:コワーキングスペース、フリースペース、プレゼンテーションスペース
■2階|フロアマップ
1階の受付を通り、2階へ上がると印象的なコワーキングスペースが現れます。2階はキッチンやラウンジ機能を備えたフリースペース、プレゼンテーションスペースで構成されており、賑やかな印象を受けました。
■2階|コワーキングスペース
コワーキングスペースは月額会員だけではなく、ドロップインでも利用できるそうです。出張の際や作業に集中したい時に便利ですね。「Glocal Factory」のコンセプトを象徴するようなインダストリアルな雰囲気で企画をしたら、良いアイディアが生まれそう……!
■2階|イベントスペース(フリースペース・プレゼンテーションスペース)
2階にあるフリースペースとプレゼンテーションスペースには大きなスクリーン…!
セミナーなどに必要な設備を完備しています。プレゼンテーションスペースには階段式の椅子もあり、映画館のような空間になっています。また、フリースペースとプレゼンテーションスペースの仕切りを取れば、イベントスペースとして最大70名が収容できるそうです。大人数のセミナーやワークショップにぴったりですね。
■2階|キッチン
他のシェアオフィスではキッチンはスタッフしか使えないことも多いのですが、ここでは入居者の方も自由に利用できるので、お昼ご飯を作ってみんなで食べたり……ということもできるのだとか。調味料をみんなで分けあっていたりと、シェアハウスみたいで楽しそう!
3F:個室オフィス
■3階|フロアマップ
3階は個室オフィスで構成されています。複合機や自動販売機が同じフロアに設置されています。
■3階|個室オフィス
個室オフィスは2〜6名で利用することができます。各部屋にはデスク、チェア、収納棚などが用意されており、入居したその日から仕事を始めることができます。長時間の作業でも疲れにくいチェアに入居者への細やかな配慮が感じられます。
4F:個室デスク
■4階|フロアマップ
4階は個室デスクと個室オフィスで構成されています。複合機や自動販売機が同じフロアに設置されています。
■4階|固定デスク
固定デスクは、1つの個室に4席のデスクが配置されたものの内、1席を利用することになります。各デスクは十分に広く、しっかりとした仕切りが設けられているので、集中しやすい環境になっています。また、個室には電子錠が設置されているのも安心ですね。
■3、4階共有スペース
3、4階には、個室オフィスや固定デスクから離れてリラックスしながら作業できるスペースも用意されています。
3階や4階にある共有スペースはフリーデスク会員も利用することができ、窓際のカウンターで立って作業をする方や、ソファーで作業をする方の姿もありました。
5F:会議室
■5階|フロアマップ
5階は3つの会議室で構成されています。それぞれの会議室の雰囲気が異なるので、目的や気分に合わせて選ぶことができそうです。
■5階|会議室
最大4名〜60名などと人数に合わせて選べる会議室。大きな会議室はミーティングだけでなく、イベントとして利用される方が多いそう。壁や照明もよくある会議室とは異なった雰囲気で素敵ですね……!
イベントではマイクやホワイトボード、プロジェクター、スクリーン、演台、変換ケーブルといった豊富な備品を貸し出してくれます。電源タップもあるので、PCを使うIT系イベントでも安心して利用することができます。
7F:会議室、仮眠スペース
■7階|フロアマップ
7階会議室には小さな会議室と大きな会議室で構成されています。カメラやマイクを貸出ししてくれるので、遠隔での打ち合わせにもぴったりです。
また、仮眠室とシャワー室があり緊急の仕事や急な出張でも嬉しい設備が揃っています。
■7階|会議室
モニターやカメラ、マイクが揃っているので、遠隔での会議でも充実した環境で望めます。困ったことがあれば、スタッフの方が駆けつけてくれます。以前、個人的に遠隔会議で利用させていただいた際も、セッティングをお手伝いしてくださり、とても助かりました。
■7階|仮眠室・シャワールーム
7階には仮眠室とシャワールームが設置されています。災害などの非常事態で自宅に帰れないときも利用できるように考えられています。
設備
■複合機
■自動販売機・喫煙スペース
自動販売機・喫煙スペースは5階にあります。また、3階、4階にも自動販売機がありますが、月額会員のみが入れるフロアとなっています。
■駐輪場、バイク置き場
駐輪場はDATEBIKEの設置場所にもなっていました。また、ガレージの隅には大きなバイクが置いてあり、びっくりしました! スタッフの方によると、大型のバイクを置きたいと入居者から申し出があり、それに応えたのだそう。何でも応えようとしてくれる柔軟な対応が素晴らしいです!
Community Manager 可野 沙織さんにインタビュー
ーenspaceのCommunity Managerとして働き始めたきっかけは何ですか?
元々はIT企業で人事やカスタマーサポートの管理者をやっていました。たまたま、弊社代表の吾郷とイベントで出会い、このような場所を作る予定だと聞きました。その後、「運営をやってみないか」と打診された時に、私が元々成し得たいと考えていたことと、方針が合致したんです。なので、enspaceをやるために入社した感じです。
ーオープン当初の様子を教えてください。
最初、2・3・7階しか完成できなくて、全館フルオープンできなかったんです。元々の建物は1〜4階がテナント、5〜7階が住居になっていて、そこを改装して今の建物へと変化しました。
コンセプトがGlocal Factoryなのですが、Factoryという言葉が示すような、どこが無機質で荒々しい部分を表現したいと思って、自分たちで作ることにしました。毎日ホームセンターに通って、「あそこの壁はどうする?」とか、「板ってあと何枚あったっけ?」って考えていて、電気ドライバーにも詳しくなりました(笑)。ここの床も職人さんに手伝ってもらいながら、自分で夜中に塗っていたのが良い思い出です。パイプ椅子を3つ並べて寝泊まりしてました(笑)。
また、Webディレクターのスタッフが、ホームページや販促物を担当する予定だったのですが……壁を剥がしたり、電気の配線を手配して指示したりとハードの部分に力を注いでくれてました。そのため、きちんとしたパンフレットがでたのも、全館オープンしたのも1年経った頃になってしまいました。運営に関しても、ルールは一つもなかったので、ルールを作るところから始めました。運営を考えて、工事して、運営を考えて……という繰り返しでした。
ーオープンから1年半経ちましたが、いかがでしたか?
現在は、自主企画で県外の人を呼んで東北に新しい風を持ってくる「ビジネス交流会」を行っています。東北ではなかなか会えない貴重なゲストにいらしていただいています。他には、入居者の数が圧倒的に増えました。会社数が11社→64社へと約6倍に増え、毎日平均30人くらいが出入りをしています。イベントが重なると1日に100〜200人がいらっしゃる時もありますね。
オープン当時、仙台市経済局にいた職員の方が、弊社の規模で「これだけ大きな空間を作ることはリスクを伴う、大きなチャレンジだ」と受け取ってくれて、「ここを中心にビジネスを発展させていこう」とおっしゃってくれたんです。その言葉が今も励みになっています。
ー入居者はどんな方がいらっしゃるのですか?
コミュニティを求めて入居された個人で活動している方から、プロシェアリング事業を展開している株式会社サーキュレーションさま、投資事業や地方創生事業を展開している株式会社MAKOTOさま、東北大学の独自AIである“AI-R”を活用した情報処理技術の開発・導入支援を行っている株式会社Adansonsさまなど、業種問わず幅広い企業さまにご入居いただいております。
ー利用者が増えた理由は何でしょうか?
他社との交流を望んでいる入居者の方が多いからだと思います。enspaceには、①企業誘致や起業を推進をするためのシェアオフィス、②オフィスに入った人が交流するためのコワーキングスペース、③交流からアウトプットするためのレンタル会議室、という3つの機能が存在しています。
我々スタッフに、「PHPができるエンジニア知ってる?」とか「今月厳しいんですけど、何か仕事ないですか?」という相談が入るので、入居者やここで出会った人を紹介しています。ビジネスのシェアリング(紹介)ができているのも交流ができているからだと思いますし、それにより人が人を呼んでくる状況が生まれました。
交流が生まれているのは「スタッフの頑張り」、「入居者が人を呼んでくれている」という2点が大きくて、皆さんに助けられています。
ー入居者とスタッフが良い関係性を築いているんですね。
そうですね。入居者の方から要望があれば、なるべく応えるようにしています。
また、仕事が終わった後に、ここでみんなでスマブラをして盛り上がることもあります(笑)。学生スタッフがイベントを開いてくれて、カレーを作ってみんなで食べる「Curry Night」という交流会も開かれています。そうやって会話が生まれることで、お互いを褒め合うようになり、他者肯定感が生まれているのだと思います。
「20人の学生がメインで運営を回している」ということがenspaceの大きな特徴だと思いますが、その影響は大きいです。
ー学生インターンについて教えていただけますか?
一番遠いところだと、山形大学から来てくれている学生もいますよ。採用の際は、同じような性格や雰囲気の学生にならないようにしています。ライオンとウサギが一緒の檻に入っているような感じ(笑)。
そもそも、学生生活と社会人生活が乖離(かいり)しているところに違和感を感じています。本来は密接に関係しているものなので、その間を埋める学びの場としてほしいという願いからアルバイトではなく、「インターン」と呼んでいます。基本的には何も教えないので、改善すべき点や仕事は自分で見つけて、自分で解決するというスタイルにしています。
最近の学生に関して感じることは、自己解決力が高い若者は増えているけど、他者との連携や配慮が足りない事が散見されるということ。
例えば、誰かのミスを発見した際、ミスに気づき当人へ「今後気をつけてください」と指摘することは確かに正しい。
でも、その背景をしっかり見る必要はある。もしかしたらミスをした人に業務負荷がかかり過ぎていたかもしれないし、体調が悪かったけど言い出せない状況だったかもしれない。その際、一番最初に当人にかける言葉は「今後気をつけてください」ではなく「大丈夫?無理してない?」になりますよね。仕事をしているのは人だからこそ、私は「正しさ」よりも「思いやり」がチームにとって大切だと考えています。
そして、これからの時代、どれだけの人を巻き込んでチームを作れるかが重要になってくると思います。気の合う人とばかりコミュニケーションを取り社会に出てしまうのは苦しい道になる。社会に出たら、気が合わない人とも向き合わないといけないし、逃げ続けることはできない。
だからこそ、ここでは自分と性格も考え方もコミュニケーションの取り方も違う人と接する練習をしてほしいです。その努力の先に多種多様な人とうまく付き合うことができる道が開けるのだと思います。
そのため、同じような性格や雰囲気の学生は採用しないようにしています。
ー入居者の方たちと学生インターンの関係はどのようなものなんでしょうか?
入居される方に、こちらからお願いしていることは、「絶対に学生を下に見ないこと」。相手を尊重して、対等にちゃんと話をしてくれる人を入居審査の基準にいれていただくようにしています。どんどんチャレンジして、失敗してしまっても許される社会があるんだよって、教えてあげたい。だからこそ、入居者の方も一緒に成長の過程を見守ってくれて、教育をしてくれて、ちょっとした上司のような感じなんです。
ーenspaceはどのような方におすすめですか?
全く仙台に知見がない方にとっては最適だと思います。他県から来て事業を伸ばしたいと考えているのであれば、ここには知見がある方がたくさんいるので、大きなスタートダッシュになります。また、起業家が多いので、起業を考えている方にも満足していただけると、自信があります。
ただ、交流が生まれるぶん賑やかな時もあるので、人の話し声が気になる人もいるかもしれません。ご自身でイヤホンなどで防げる範囲だとは思いますが、全く音が出ない環境ではないので、ご理解いただけると嬉しいです。
わりと3、4階のオフィススペースは静かで、2階はわいわいと話をする方が多いです。気分転換にスタッフと話をしたいから、2階へ降りてくる方もいらっしゃいます。
ー今後の目標はなんですか?
オープンして約1年後に会員種別に「テナント」が増えました。現在、6階の一部を全てテナントエリアにしています。
最初の調査では、「小さい部屋の方が需要がある」と言われていたのですが、1年運用して大きな会議室やオフィスの方が需要があると分かったので、部屋をさらに大きく改装する予定です。フィリピンのセブ島にもenspaceが出来上がる予定です。他のスタッフが現地に行って市場調査や運用を担当するので、そのサポートもします。
また、運営会社であるエンライズコーポレーションの事業を拡大していきます。すでに仙台では今年の7月に育成事業(ITCE Academy 仙台校)をスタートをさせており、エンジニアを採用したい企業様や新入社員の研修代わりに使いたいという企業様がいます。まだ、企業様にエンジニアを派遣する事業は東北に持ち込めていないので、今年は導入できるように考えています。
最近、東北エリア全体を見る管理者にも就任したので、実際に東北6県へ行こうと思っています。カスタマーサービス出身ということもあり、コミュニケーションを大切にしたいです。enspaceの入居者さんとマッチングできる可能性があるのか実際に行って、いろいろな方と話をして感触を得たいです。言うのは簡単ですが、やることはたくさん。様子を見ながら、全て100パーセントでやり遂げたいです。