【おみせの育て方】PUBLIC. COFFEE & BAR 大友 隆嗣さん
仙台でお店を営む方が、どのようにお店を産み、育ててきたのかに関するインタビュー。今回は、宮城県仙台市太白区長町で「PUBLIC. COFFEE &BAR」を経営する大友 隆嗣さんにお話をお伺いいたしました。長町在住の人気インスタグラマーbonとponさんの投稿でも度々登場するこのお店は、開業5年目を迎えたそうです。大阪での理想のカフェとの出会い、生まれ育った長町での開業から試行錯誤を乗り越え、今後の目標についてお話いただきました。
Q.いつ頃カフェに興味を持ったのですか?
実家が長町商店街でバイク屋を営んでいるので、後を継ぐために高校卒業後は関東のバイクの専門学校に進学をしました。その後、大阪のバイク屋で働いていました。当時、いわゆるカフェブームがあって、みんなカフェに行くようになったんですよ。カフェではいろんな人との交流があって面白かったです。大阪の駅前に老夫婦がオーナーのカフェがあり、昼間はランチ、夜は貸切でイベントを積極的にやっていました。オーナーさんと仲良くなるうちに、「こういうお店を将来的にやれたらいいな」と思うようになりました。
Q.仙台でカフェを開くまでの経緯を教えてください。
大阪から仙台に戻ってきて、しばらくはバイク屋で働いていました。でも、飲食店をやりたい気持ちがどんどん強くなってしまって……。25歳の時に、飲食業に携わりたいと家族に相談しました。学生時代から飲食店でアルバイトをしてきたのですが、やるからにはしっかりとしたものをやりたかったので、修行のために東京へ行きました。3、4軒のカフェやバルで働きながら学校にも通い、カフェを開業するのに必要な資格や調理師免許を取りました。その時々の流行りみたいなものも見えてきたし、中途半端にならないためにどうしたらいいのかを学ぶことができたのは良かったのかなって思いますね。33歳の時に仙台に戻り、飲食店で働きながら物件を探し始めました。
Q.こちらの物件はどのように見つけたのですか?
以前は白松がモナカさんがこちらの物件で、30年ほどお店を運営されていました。2013年頃にお店を閉められるということで、商店街の会長をやっている父の元へ挨拶に来てくださいました。長町商店街で物件を探していたこともあり、大家さんに貸していただけるようお願いをしました。
大家さんが良い方で、建物が古いことを理由に外装やトイレの移設にかかる費用の負担を申し出てくださったんですよ。大家さんのご協力をいただきながら、店づくりを始めました。
また、仙台市の補助金も申請しました。姉が勧めてくれた起業のセミナーに参加したのをきっかけに、申請書類のアドバイスをいただくことができたので、とても安心しました。今となっては、当時の自分にそんなにお金かけるなと言いたいですね(笑)。借りた資金は今も地道に返済しています。
Q.内装やインテリアはどのように決めたのですか?
海外のカフェの写真を内装屋さんに見せながら「床はこんな感じ、棚はこんな感じで作ってください」と施工をお願いしました。特にデザイナーさんを入れてはいないです。天井を抜いてみたら鉄骨のハリなどがあり、どうしようかと困ってしまいました。内装屋さんに「白く塗ったら、面白くなるんじゃないか」と言われ、その通りにしたところ、良い感じに仕上りました。この、木のハリや天井も元々のものを生かしています。くるくるとした鉄の棒も、元々は電線が通っていたんですけど、残した方が面白いねってなりました。
インテリアは無骨なインダストリアルなものが好きなのですが、お店に入りやすいようにポップな要素も入れています。帽子の照明はオープンの3年前に偶然、見つけて買っておいたものです。お店の白と黒のコンセプトにもぴったりで、シンボルマークのようになっています。
Q. メニュー表やロゴはどのように制作されたのですか?
メニュー表はデザイナーの姉が作ってくれました。オープン当初はメニューが記載された紙のランチョンマットを作っていて、持ち帰っていただけるようになっていました。しかし、かなりコストがかかってしまったので、やめてしまったんです。ロゴデザインなども、基本的に姉と2人で話し合って決めています。姉から影響を受けているせいか、好きなテイストも似ているんですよ。
Q.定番メニューのフレンチトーストについて教えてください
オープン時からフレンチトーストは核として崩さないことを決めていました。当時はパンケーキブームだったので、そっちにはいきたくなかったんですよ。華やかな見た目のものというよりも、シンプルでちょっと可愛らしいくらいのものにしたかったんです。東京で働いていたお店で、バケットのフレンチトーストを出していて、自分のお店でも出したいなと思いました。食事として提供するために、ベーコンとウインナーを乗せてみたら、甘さとしょっぱさのバランスが良くて。他にも試作をたくさん作りましたが、これが一番しっくりきました。
Q.お店を始めて1〜2年目はどうでしたか?
当初は、他店で店長として働いていたこともあり、マネジメントにはそれなりに自信がありました。ただ、雇われ店長とオーナーはやはり違いました。売上に対してシビアになる必要がありますが、数字だけを追ってしまうとお客様が見えなくなってしまいます。お客様に対してのホスピタリティも大事にしたいという思いでお店を開いたので、バランスについてはすごく悩みました。そのことでスタッフと意見が分かれる時もありました。
Q.スタッフの方々について教えてください
オープン当初は夜もしっかりと営業していたので、スタッフは8名ほどいました。現在は通常は4名、忙しい時で5名で運営しています。お客様にもせかせかしていると思われない人数です。ここ2年ぐらいはメンバーの入れ替わりも無く、スタッフは定着してきていると思います。この人に任せれば大丈夫という関係性ができていることに加え、5年間の経験によるノウハウを蓄積・共有できているかと思います。イベントなどの出店も柔軟に対応してくれているのでとても心強いです。
Q.3年目以降はいかがでしたか?
3年目からは夜の営業を金曜日と土曜日のみにしました。商店街のお手伝いをすることが多くなったり、東北のコーヒーを盛り上げる活動をしている「Coffee Fellows」という団体に参加するようになったりと、僕自身が夜にお店に出れないことが多くなりました。
商店街の繋がりで仕事をいただいたり、Coffee Fellowsの繋がりでイベント出店のお声がけをいただくということが増えてきたことで、どんどん自分が外に出て情報を得ることも必要だと感じています。もちろん、夜のイベント依頼があった時は、大阪のカフェを見習って他の曜日でも受けるようにしています。
Q.生まれ育った長町でお店を開いてみて、いかがですか
昔、長町商店街は、歩いていると肩がぶつかるくらい人通りが多かったんです。しかし、2軒あったデパートも無くなってしまい、地下鉄やザ・モールができた後は、人通りが少なくなってしまいました。子供の時は、お祭りがあると必ず手伝わされるくらい盛り上がっていたのですが、年々縮小してきているのが寂しいですね。商店街に遊びに寄ってもらえるようなお店にしていきたいです。「長町街かど教室」で開催しているコーヒー講座では、参加費500円でコーヒーが2杯飲めて、ドリップの入れ方のレクチャーも学べるので、ぜひ参加していただきたいです。また、ゼビオアリーナと長町商店街はタッグを組んでいるので、仙台89ERSとの橋渡しができたらいいですね。最近では、飲食部会を作ったりもしています。いろんなものを繋げていくことで、昔ほどとはいかなくても「長町って面白いよね」と思ってもらえるような街にしていきたいです。
Qこれからの目標は何ですか?
コーヒーローストが全国的に認知されてきているので、焙煎にも取り組んで行きたいです。コーヒーフェローズの方々に焙煎のことを教えていただきながら、数年かけて準備をしたいと考えています。
また、コーヒー豆だけでなく、商品の販売に向けて動いているところです。今までもオリジナルのコーヒーカップを作っていたのですが、姉夫婦がアパレル関係の仕事をしていることもあり、エプロンなども作りたいねって話をしています。
これまでは色々と試行錯誤をしてきましたが、5年目に入り、方向性も定まってきた気がします。これからは仙台89ERSや定禅寺通りのイベントに出店したりと、どんどん外にお店を露出させていきます。
PUBLIC. COFFEE & BAR
仙台市太白区長町3-7-3
月〜木、日 11:00-18:00
金、土 11:00-17:00、18:00-24:00
https://www.public-coffeeandbar.com/