【聞くまち・榴岡】お花見も球場もすぐそばの、昔ながらのケーキ店
再開発の進む仙台駅東口。そのメインロードは、広々とした4車線の「宮城野通」だ。仙台駅と東北楽天ゴールデンイーグルスの拠点「楽天生命パーク宮城」とを結ぶまっすぐな道でもあることから、えんじ色のユニフォームやキャップを身に着けた人々が歩く姿も目立つ。
仙台駅と球場との間に位置するのが、榴岡という地区だ。この場所に25年前から洋菓子店「パティスリーロッシェ」を開く店主の岩渕弘治さんに、この街について聞いた。
仙台駄菓子店だったお店が、まちのケーキ屋さんに
岩渕さんが実家であるこの建物に店を開いたのは、1995年のこと。元々は仙台駄菓子を作る和菓子店で、岩渕さんも子どものことからよく駄菓子作りを手伝っていたのだという。「七五三のときのアメとか、よく作っていましたね。小学生のころは周りがみんな遊んでいるのに手伝わされてね」
小さい頃からお菓子が身近にある環境で育ち、岩渕さんも自然とお菓子作りの道へ。「昔はケーキなんて誕生日くらいしか食べられない、特別なものだったから」と洋菓子を志し、仙台市内の3店舗で修行したのち独立した。
仙台駅から徒歩圏内で、大きな公園が日常にあるまち
生まれも育ちもこの場所という岩渕さん。榴岡の印象を聞くと「駅裏」という答えが返ってきた。「昔はお寺と木造長屋の住宅ばかりの場所だった。でもその頃のほうがあたたかみがあったのかも」と振り返る。仙台駅へも1km足らずで歩いていけるアクセスのよい榴岡。かつて「駅裏」と呼ばれていた東口の宮城野通沿いには、今やオフィスビル、大学や専門学校、住宅マンションなどが建ち並ぶ。「今はここからちょっと歩けば、何でも揃うよね」
まちの「顔」は何といっても榴岡公園。仙台藩4代藩主の伊達綱村が京都から取り寄せた桜を植えたのが始まりとされる、歴史ある公園だ。広大な公園の敷地の至るところでは、球技の練習をする学生やバドミントンなどをして遊ぶ親子の姿が。春になると19種類約400本の桜の木が咲き誇る、圧巻のお花見スポットでもある。
仙台駅西口のいわゆる「街中」に比べ、ゆったりとした空間が特徴のこのエリア。スーパーやファミリーレストランなど広い敷地を要する施設も揃い、暮らしの利便性は高そうだ。
野球観戦やコンサートが身近にある生活
榴岡は公園だけでなく、レジャー施設に近いまちでもある。パティスリーロッシェのカフェスペースでは「隣の仙台サンプラザホールで開かれるコンサートの前に立ち寄る人も多いんだよ」と、岩渕さん。
榴岡は、仙台駅と楽天生命パーク宮城までそれぞれ1km足らずで行ける地域。野球観戦が身近になる生活ができそうだ。最寄りのJR榴ケ岡駅から球場までをつなぐ宮城野通は「楽天カラー」であふれており、球場までを歩く道のりも楽しい。
四季折々の催しを地域で支える
ガラス張りのお店の中からは、四季それぞれのまちの姿がよく見える。「初詣のときは、ここから榴岡天満宮の前にずらっと人が並んでいるのが見えるよ。夏にお神輿をするときは、この店の前を通るしね」
町内会では季節に合わせたイベントもあり、昔から馴染みある近所の人たちで支え合って開催しているのだそう。「裏の公園では毎年春になると町内会で花祭りをしていて、その手伝いをしていますよ。この地域の店では榴岡小学校の職業体験も受け入れているし、地域のつながりは強い方なのかも」
変わらない味で宮城野通を見つめ続ける
取材を終えるころ、店に「ボストンパイ」を10個予約したお客さんが来店した。人気ですぐに売り切れてしまう食べごたえ十分のケーキを手に入れ、お客さんも笑顔だ。
「ずっと商品変えないよね、ちょっとは変えればいいのに、って言われることもあるんだけどさ…」そう笑う岩渕さんの元にまた、お客さんが訪れた。岩渕さんは今日も変わらない味でケーキを作り、この店から宮城野通を見つめ続けている。
パティスリーロッシェ
tel. 022-293-1827
宮城県仙台市宮城野区榴岡5-2-3
営業時間 10:00〜20:00(土日祝19:30)