03 暮らし

くらしとおやつ おやつの包み紙

- 2020.04.29
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くらしとおやつ おやつの包み紙

おやつが好きだ。
どんなに疲れていても、少々嫌なことがあっても、
おやつがあれば、大抵のことをリセット出来てしまう。
そんなおやつについて、エピソードや私自身のこだわりを綴っていく。

・・・
「鶴岡は今でもよく行くんです。町には昔からあるお菓子屋さんがいくつかあって……」
昨年、おやつをテーマにしたイラストと文章の個展「おやつ展」を開くために、いろいろな人に会い、その人の好きなおやつを尋ねて回っていた。「東北スタンダードマーケット」のディレクター、岩井巽さんも協力してくれた一人。
山形の大学に通っていた彼は、ローカルなおやつを沢山教えてくれた。

「……そのお店には、“からからせんべい”っていうのがあって。」
懐かしい響きに思わず身を乗り出した。
「からからせんべい」は、クッキー生地のような硬めのせんべいをちまき握りのように三角に成形していて、ぱりんと割ると、中から手のひらサイズのおもちゃとおみくじが出てくるという、日本版フォーチュンクッキーだ。
岩井さんの話では、「からからせんべい」は鶴岡の「梅津菓子舗」でも作られているという。
幼い頃、何度か食べたことがある懐かしい「からからせんべい」の話が思わぬタイミングで飛び出し、不思議な偶然を感じた瞬間だった。

話は変わるが、最近家にいる時間が長いので、物置と化していた部屋を整理することにした。
この部屋で一番多くを占めているのが紙類である。
美術館やイベントのフライヤーやチケット、ショップカード、パンフレットなど、見た目や質感が好きなものは全て貰ってとっておくので、段ボール箱5~6個は下らない。
箱にぎっしり詰まった紙類を取り出していくと、底の方からクッキーの缶が出てきた。
缶の蓋を外すと、「懐かしい……」思わず声が漏れた。
そこには、小さい頃から集めていたおやつの包み紙が詰まっていた。
飴やグミの袋の口はきれいにはさみで開けられ、外国のチョコレートの銀紙はきれいにしわを延ばしてある。鼻を近づけると、もうそこにはないはずの甘い香りが、記憶と共に蘇ってくるようだ。

思い返せば、こどもの頃からおやつの包み紙が大好きだった。
素材や質感、そこに印刷された文字や柄によって、おやつそのものの美味しさや可愛らしさが際立つことを、こども心に感じていたのかもしれない。

そのときめきを持ち続けて大人になった今、昔ながらのお菓子屋さんの包み紙集めに余念がない。知らない土地のお菓子屋さんに訪れた時や、知人から手土産を頂いた時、ときめきセンサーがびびっと働く。

東北のおやつは、素朴で愛らしい包み紙のものが多い。
昨年の「おやつ展」でお気に入りの包み紙として紹介したものの中に、宮城県美里町小牛田銘菓の「薄皮山の神まんじゅう」がある。鮮やかな山吹色の紙袋には、小牛田駅近くの山神社と鹿が描かれ、神社にちなんで、お守り袋のように包み紙の口が折られている。
かつて、小牛田駅周辺のお菓子屋さんで盛んに作られていたこの薄皮まんじゅうだが、今製造しているのは創業明治33年の「村上屋」のみ。懐かしいまんじゅうと愛くるしい包み紙を、どうかこの先も変えずに作り続けてほしいと思う。

「おやつ展」の時、お世話になっている方からいただいた手土産が、山形県天童市「腰掛庵」のものだった。
平成2年創業の「腰掛庵」は、酒饅頭「醸まん」やわらび餅が大人気のお店で、いただいた「おすすめセット」は、3種類の一口サイズの生菓子がお行儀よく箱に並んでいた。
そして、この箱にかかっているのし紙が可愛い。淡いパステルカラーのステンドグラスの窓に、わらびもち・腰掛庵・醸まんの文字がはめ込まれている絵が描かれていて、とても涼しげだ。口どけの良い生菓子があっという間になくなってからも、のし紙のお陰で余韻に浸ることができる。

かつて私がときめいた「からからせんべい」は、透明な袋に三角形のせんべいが詰められた簡素な包みだが、中身のおみくじとおもちゃは必ずとっていたし、小さい頃は、せんべいそのものよりも中身がほしくて買ってもらっていたともいえる。

思い出に浸り、久しぶりにご対面した包み紙にときめいて、全く整理がはかどらないところに、岩井さんから嬉しい知らせが入った。
東北の工芸品や食品を、家に居ながらにして楽しむことができる、「東北スタンダードマーケットオンラインショップ」の中で、5月10日まで「#tohokuru」というイベントを開催しているという。
早速サイトを開いて、迷わず「食べもの」のページを探す。どれも食べた後にとっておきたくなるような包み紙やパッケージのものばかりだ。……おっ、大好きな「のし梅」がある!

おやつの楽しみは、そのものを味わうだけではなく、いろいろな場所に自分で足を運び、お店の雰囲気を感じ、そこにいる人と出会えるところにもある。

残念ながら、そういったおやつの楽しみ方はもう少し我慢だ。しばらくはネットを介して楽しむことにする。
サイトで選んで注文する楽しみ、届くまで待つ楽しみ。
封を切る楽しみ、食べた後、包み紙をとっておく楽しみ。
家でのおやつはこんなにも楽しい段階が多い。
そしてまた近い未来に必ず、直接作り手本人の手から、おやつをいただきたい。

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東北スタンダードマーケット「tohokuru」

HP 公式ホームページ

instagram @tohoku_standard_market

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