くらしとおやつ 「かいごはん」のシントー
おやつが好きだ。
どんなに疲れていても、少々嫌なことがあっても、
おやつがあれば、大抵のことをリセット出来てしまう。
そんなおやつについて、エピソードや私自身のこだわりを綴っていく。
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私が仲良くなりたいと思う人の3か条。
その一、食べることが好きな人。
その二、基本的に嫌いな食材がほとんどない人。
その三、食事の席で会話が弾む人。
ざっと頭に浮かんだ親しい友人は、この3つが当てはまっていて、大抵彼らとご飯を食べる時は、ああでもないこうでもないと食の話をしている。
何も、人気のお店を多く知っていてグルメだとか、高級な食材を多く食べてきたとかそういうことではない。
はじめての味や食材に遭遇した時に、前のめりで興味を示す姿勢や、美味しい料理を口に運んだ時に見せるしみじみとした表情などが見られると、あぁこの人ともっと仲良くなりたい、と思うのだ。
とある真夏の夜、知人を介して出会ったのが、「かいごはん」のオーナー、かいさんだ。
かいさんは、一ヶ月間のベトナム旅行中に現地の料理に魅せられ、帰国後に「ベトナム食堂コムビンザン」の名前で料理を提供されていた。
野菜や果物をふんだんに使い、日本の醤油にあたる魚醤(ヌクマム)や香草で味をつけ、ごはんや米粉の麺(フォー)を主食とするベトナムの食卓は、日本とも通じる部分が多くありそうで、いつかは訪れたい国のひとつである。
初対面のかいさんに向かって、ベトナムの食について質問攻めにした私。
「屋台飯、是非食べたいけれど衛生事情はどうなんでしょう?」
「うーん、お腹を壊す人もいれば大丈夫な人もいるしね。食べてみないとわからないよね。私は食べ過ぎでお腹壊したけど。だって食べたいものだらけなんだもん。」
なんと素敵な回答。お友達になりたい。
明るくからからと笑いながら、かいさんは手際よくベトナムのおやつ・チェーを作ってくれた。
チェーはベトナムの伝統的な甘味で、豆やさつまいも、果物や白玉団子などが入っているおやつだ。
かいさんのチェーは、緑豆、かぼちゃ、生姜シロップなどがたっぷり入っていた。グラスに入ったこれらをぐるぐるかき混ぜてすくっていただく。生姜シロップはほんのり暖かく、ぴりっと辛味がきいていた。甘さ、辛さ、ごろごろ、ざくざく。ひとつのグラスにいろんな感覚がごちゃまぜになっていて飽きない。
現在のかいさんは、青葉区の西公園の直ぐ近くにある「kaffe tomte」内で、「かいごはん」という名前で週3日料理を出されていて、旬の野菜や穀物を使ったおかずとふかふかに炊かれた玄米ごはんをいただくことができる。
「明日お昼ごはんいただきに伺います」
「嬉しい!嬉しすぎまーす!」予約をしたら、すぐにお返事をいただいた。
「ちなみに、おやつはありますか?」
「今のところ、米粉のレモンケーキ、小豆甘酒の白玉、あと頑張って米粉のどら焼き作ろうかな!」
さすが、かいさん。おやつまで抜かりない。
翌日、大きなキッチンでてきぱき動き回る小さなかいさんを横目に、大きなお皿に山盛り並んだ色とりどりのおかずを頬張った。
具沢山で品数も多くとても満足できるのに、かいさんの作るお料理は全く重くない。「体の声を聞いて、欲しているものを食べたい」かいさん自身のシンプルな想いで作られているからだ。
食事の後、メニューのおやつ欄に「シントー」という見慣れない言葉を見つけた。
レモンケーキのつもりで来たけれど、はじめてのものに遭遇した私は、前のめりで「シントー」のパイナップル味を注文した。
運ばれて来たのは薄いクリーム色のシェイクのような飲み物で、グラスに注がれたそれは、ふわふわに泡立っている。
「シントーはベトナムのスムージーで、現地のカフェでは定番メニューです。」
ガラスの棒でさっとかき混ぜて一口ごくり。ふわぁっとパイナップルの夏らしい甘味が広がった。しかし、しつこくない。食べ慣れている食材の味がする。
「豆乳で作った練乳で甘味を足しているんです。」
なるほど、優しい後味は豆乳だったのか。またごくり。
どこまでも軽やかな飲み口のシントーは、異国の飲み物でありながら、懐かしく穏やかな余韻を残してくれた。
甘い、辛い、酸っぱいなど、一言では言い表せないごちゃまぜの食文化はアジアならではだ。かいさんによると、シントーに使われる食材はオレンジやグァバの果物のほか、トマトや人参、アボカド、ココナッツなどさまざまで、それらのミックスもあるという。
「ベトナムではガイドブック持って、ハテナになりながら分かるのだけ頼んでましたね」
食べることが好きで、基本的に嫌いな食材がほとんどないであろう、かいさん。彼女の作るお料理をもっと食べたいし、きっと、一緒にご飯を食べたら楽しいだろうな。
今度、ご一緒してください。
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かいごはん
仙台市青葉区立町18-12ライオンズマンション西公園第3「kaffe tomte」内営業時間:日・月・火 11:30〜15:00(夜の営業は休止中)
Instagram @okakai