02 食べる

くらしとおやつ 「ing」の玉子サンド

- 2020.11.29
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くらしとおやつ 「ing」の玉子サンド

おやつが好きだ。
どんなに疲れていても、少々嫌なことがあっても、
おやつがあれば、大抵のことをリセット出来てしまう。
そんなおやつについて、エピソードや私自身のこだわりを綴っていく。

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私がタイトルに心射抜かれて手にした本に、『玉子ふわふわ』(2011年 筑摩書房出版)がある。
37人の作家による玉子をテーマにしたエッセイ集で、各々が好きな玉子料理愛を書き綴っている。ページをめくる度に玉子料理のオンパレードで、もれなく玉子が食べたくなる内容だ。

目玉焼き、オムレツ、スクランブルエッグ……一言に玉子料理と言っても幅広い。
ゆで卵ひとつ取っても、半熟、固ゆでと好みも千差万別だ。
朝食がご飯派でもパン派でも、玉子料理の黄色があれば食卓がぱっと華やぐし、バイキングでオムレツを焼いてくれるコーナーがあったりなんかしたら、ちょっとした特別感がある。

メインでもサイドディッシュでも大人気の玉子だが、お菓子となれば縁の下の力持ちに徹する。
焼き菓子のさっくり感に力を発揮してくれるし、卵白ならふんわりしたメレンゲに、クッキーに卵黄を塗って焼けば、つやりと光る照りを演出してくれる。

とにもかくにも万能な玉子だが、玉子を使ったおやつというと、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。
プリン、私がはじめに思い浮かべたのはこれである。まさに玉子の風味を味わう王道のおやつだ。
一方、最近良質なタンパク質としてゆで卵をおやつに食べる方もいる、という話を耳にした。その話を聞いた時、これはもしかするとおやつに入るのではないか、と思ったものがある。

玉子サンドである。

ゆで卵をほぐして、マヨネーズで和えた玉子サラダを食パンに挟んだサンドイッチは、こどもから大人までに愛される定番で、私も大好きである。
少し辛子を混ぜるとぴりっとした辛味がアクセントになり、これまた美味しい。
コンビニでも気軽に手に入るので、朝食から小腹が空いたおやつにまで幅広いシーンにフィットする万能サンドだ。
が、しかし。最近、この玉子サンドに新しい流派が参入してきている。玉子サラダならぬ、厚巻き玉子のサンドだ。厚焼き玉子といえば、出汁を利かせた和食の定番おかずで、それはおやつではないように思う。
そんなこちらの気も知らず厚焼き玉子といえば、まるで生まれたてのひよこのようなふかっとした無邪気な風貌で、白いパンに抱きかかえられている。サンドイッチは玉子サラダ派の私、これはけしからんと思っていたのだった。

そんな私の中の転機は突然やってきた。

今年の10月、国分町の一角、肴町公園のすぐ近くに、サンドイッチとデリのお店「ing(イング)」がオープンした。
コンクリート壁のシンプルな外観に、入り口の水色の扉が映える店構えだ。ちょうど小腹が空いていたある日、ふらりと立ち寄ってみることにした。

テイクアウト専門のお店でイートインスペースはないが、店内の大きなショーウィンドウには、サンドイッチと色とりどりのお惣菜が並んでいた。
どれどれ……。近づいてよく見ると、サンドイッチの種類の多さに目を見張る。
トマト煮込みサンド、明太ポテトチーズサンドイッチ、かぼちゃコロッケサンドなど、おそらくここにしかないようなユニークな具材を挟んだ品揃えだ。

全部試したくなるなぁ、そう思ってうきうきして眺めていると、ふとあるサンドイッチで目がとまった。「玉子サンド」、しかも見たところ厚焼き玉子タイプである。いつもならスルーするところだが、気になる……。気がつけばオーダーしていた。

ingでは、使い捨ての容器や袋を用意しておらず、お客さんがそれぞれエコバッグや容器を持参するスタイルだ。すぐに食べたかったので、そのままサンドイッチの紙包みを受け取る。

早速茶色い紙に包まれた玉子サンドをがぶり。
おや。想像していた厚焼き玉子ではない。
パンの間に挟まれた玉子の断面をよく見ると、細かく切られた食材が見える。改めてがぶり……おっと、これはハム?しっとりした玉子の口当たりの後に、口の中で色々な食感が弾けた。

それもそのはず、ingは、大町にある「サルメリア・コメスタ」の姉妹店としてオープンしたお店で、卵焼きには、サルメリア・コメスタのサラミや生ハム、旬の野菜を炒めて使っているという。
さすがハムやソーセージの専門店、たまごに負けないお肉の存在感、絶妙な塩気と旨み。時折野菜の食感もメリハリがあっていい。パンの両面に塗られたマヨネーズとマスタードのコクと辛味も相まって、一気に食べてしまうのがもったいない程、ずっと食べていたい味だ。

美味しい感動をお店のインスタグラムからメッセージで伝えると、オーナーの千葉さんから丁寧なお返事をいただいた。

ingの玉子サンドは、だし巻き玉子を挟んだサンドイッチをもっと違う形で作れないだろうか、というところから始まっている。そこで思いついたのが、イタリアの家庭料理「フリッタータ」。具材がたっぷり入ったイタリア版玉子焼きからヒントを得て作られているんだそうだ。

道理で。大きく頷いた。
玉子焼きは玉子焼きでも、ingのサンドイッチに使われているのは、パンとの相性がぴったりな玉子焼きなのだ。玉子サラダサンド一択だった私は、あっさりと手の平を返した。

朝ごはんに、お菓子の材料に、この時期なら鍋の締めのおじやにひと割りと、当たり前のように普段多くの人が食しているであろう玉子。無いとやっぱり物足りない、ちょっと寂しい、そう思わせてくれる食材だ。

毎日食べても飽きないサンドイッチやお惣菜をいつもの日常にプラスしてもらえるお店になるように。そんな想いでお店をオープンさせたという「ing」も、ひょっとすると町の人の玉子のような存在かもしれない。

そして、そんなingの玉子サンドにかぶりつける日は、一日ハッピーに過ごせるに違いないのだ。

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ing
仙台市青葉区国分町1丁目4-1

営業時間・定休日
Instagram @ing.sendai でご確認ください

電話 022-796-8355

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