くらしとおやつ 干し柿
おやつが好きだ。
どんなに疲れていても、少々嫌なことがあっても、
おやつがあれば、大抵のことをリセット出来てしまう。
そんなおやつについて、エピソードや私自身のこだわりを綴っていく。
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「本当に毎日おやつを食べているんですか?」と聞かれることがあるが、本当に毎日おやつを食べている。
かといって、毎日カフェでケーキとコーヒー、なんていう時間があるわけではない。
おせんべい一枚立ったままぼりぼり、みたいな日もあれば、じっくり果物を煮詰める余裕がある日もある。
忙しい時は手早くエネルギーチャージ、時間と心に余裕があれば手作りと、おやつは謂わば、生活のバロメーターのようなものだ。
そんな私が最近毎日食べているのは、柿である。
親戚の家の庭にある柿の木に、沢山実がなったので送ってもらった。ダンボール一箱を食べきるとすぐに第2弾が届いたので、日々有り難くせっせと頂いている。
今回改めて柿と対峙して、気づいたことがある。
柿は、とってもきれいな色をしているということだ。
黄色やオレンジ色といった明るい色味だが、敢えて山吹色、橙(だいだい)色と、日本的な色味で表現したくなる。
りんごを布などで磨くとぴかぴかに光るが、柿は磨かなくたって最初からつるつるぴかぴかだ。そのつるっとした質感が、よりきれいな色を際立たせている。
先日友人とカフェでお茶した時のこと。
お店のおすすめのワッフルを注文することにしたのだが、シンプルなはちみつバターやチョコバナナもあったにも関わらず、毎日むいて食べているにも関わらず、柿を添えたワッフルを選んでしまった。
潜在的に気になっているのだ、柿が。
運ばれてきた焼きたてのワッフルには、薄くスライスした柿とクリームチーズが添えられていた。
さくっとワッフルをナイフで切り、柿とクリームチーズを乗せて口に運んだ瞬間、唸った。柿のほのかな甘みとクリームチーズの塩気が抜群に合う。お互いの味を消すことなく引き立てている。この組み合わせは大正解、とひたすらに味わい、帰り道に迷わずスーパーでクリームチーズを買った。
それ以来我が家では、クリームチーズと柿をそれぞれ食べやすいサイズに切って、醤油数滴と黒胡椒と共に和えていただいている。柿の新たな一面を感じられるのでぜひお試しを。
柿といえば、忘れてはいけないのが干し柿である。
果物も野菜も、ドライにすると味がぎゅっと締まって濃厚になるが、干し柿はその最たるものだと思う。
干し柿といえば、昨年の今頃開催したイラストと文章の個展「おやつ展」での思い出がある。
作品作りにあたり様々な方に協力していただいたが、その中でも印象深いのが、「森のようちえん 虹の森」のこどもたちと一緒に絵を描いたことである。
「森のようちえん 虹の森」は、園舎を持たない幼稚園で、公園や森林などの屋外をフィルードにこどもたちと遊ぶ保育をしていて、0〜6歳のこどもたちが通っている。
絵を描いた日はちょうど干し柿作りの日で、秋空の下、お母さんたちが柿の皮をむいて枝に紐をくくりつけている横で、私は芝生に大きな画用紙を広げた。
画用紙を広げて絵の具を出し始めた途端、こどもたちが何が始まるんだろうと駆け寄ってきた。「好きなものを好きに描いていこう」と言うまでもなく、こどもたちは絵の具をパレットや紙に直接絞り出し、筆や指を動かしはじめた。
画用紙にこどもたち5〜6人が押し合いへし合い、それでいて周りには目もくれず自分の絵に集中している。葉っぱは緑、空は青、そんなステレオタイプを教えられていないまっさらな感性に、心がじんわりあたたかくなった。
「おやつ展」の期間中、一緒に絵を描いてくれた女の子が展示に足を運んでくれた。プレゼントと、恥ずかしそうに手渡してくれたリボンを巻いた巻物を開くと、画用紙に橙色と山吹色の大小の丸が沢山描かれていた。絵の具で干し柿の絵を描いてくれたという。またまた心がじーんと熱くなった。
今年は世の中の状況もあり、「おやつ展」を開催することは出来なかったけれど、「森のようちえん 虹の森」から柿をいただいて懐かしさに浸っている。
一瞬、家のダンボールの柿が頭をよぎったが、いただいたのは渋柿。干し柿作りで紐につるしやすいように、枝を残しておいてくれている。
我が家は一軒家ではないので、カラスや鳥が来ないように、皮をむいたら念のため通気性の良い不織布で包み、洗濯物のピンチで柿を干した。今年の11月は連日いい天気なので、きっと美味しい干し柿が出来るだろう。
干し始めたばかりなのに、ベランダの柿が気になって仕方がない。
さて、今日も柿をむきますか。
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