くらしとおやつ 「GELATI BRIO(ジェラーティ ブリオ)」のファーブルトン
おやつが好きだ。
どんなに疲れていても、少々嫌なことがあっても、
おやつがあれば、大抵のことをリセット出来てしまう。
そんなおやつについて、エピソードや私自身のこだわりを綴っていく。
・・・
「ファーブルトン食べに行かない?」
大学時代の友人からLINEが来た。
「なぁにそれ?」
興奮ぎみなのか、即既読がついた。
「とにかく食べてもらいたい!13時に南町通りのセブンで。」
「おけ!」気のおけない友人とのおやつの約束は、タイミングが合えば早い。
友人に連れられていそいそと向かう「GELATI BRIO」は、サンモール一番町を南町通りの方に抜けて片平に向かう途中、うなぎの「開盛庵」の並びにあるイタリアンジェラートのお店だ。お店の軒先にはパラソル付きの椅子もあり、暖かい時期の天気がいい日は外で食べるのも気持ちが良い。
季節の野菜や果実をベースにしたジェラートは色鮮やかで、素材の味がダイレクトで濃厚なのがこのお店の特徴だ。
足繁くこのお店に通う友人は、ためらいなく壁に貼られたメニューを指差して「ファーブルトン2つ」と注文をした。
お値段、1つ、1,540円。お、おやつの値段にしてはなかなか。
「出来上がりまで30分程お時間いただきますが、よろしいですか?」
待ち時間については友人から聞いていた。了承しながらカウンター席に着く。
お値段といい、待ち時間といい、一体どんなものなのか。もくもくと想像が膨らむ。
お店の行列に並んでいる時の待ち時間はあまり得意ではないが、席についてからの多少の待ち時間は気にならない。
店内を観察したり、ゆっくり本を読んだり、お店での時間の過ごし方は、飲食をする以外にも楽しむポイントが色々とあるからだ。
気のおけない友人と一緒となれば、近況報告だけで30分はあっという間である。
カウンター席から見えるキッチンのオーブンからは、オレンジ色の光と甘い香りが放たれていて、中には、ぷっくりと膨らんでいるものが見える。
「あれがファーブルトン。こうやって話しながらオーブンを覗けるのも待ち時間の醍醐味。」
友人がうっとりとオーブンの中に見とれている。
いよいよオーブンから話題のそれが取り出され、カウンターに紙ナプキンとナイフとフォークが並べられた。期待が高まる瞬間。
「お待たせしました」目の前に丸い平皿が置かれる。
こんがりときつね色に焼けた、直径5~6cmの丸い焼き菓子が2つ、これがファーブルトンというお菓子のようだ。そこに乳白色とチョコレート色のジェラートが2種類、純白のホイップクリームと金柑のコンポートがたっぷり添えられている。お皿に隙間はない。
お店の方が、追い打ちをかけるようにお皿の上から何やらスパイスをかける。
「ナツメグですね。ファーブルトンはお肉のように、フォークとナイフで切り分けながらお召し上がりください。」
なんというボリューム。想像のおやつの範疇を超えてきた。
言われた通りにまずは、ファーブルトンを切り分けてそのまま口へ運ぶ。
さくっとした表面、即座に中からふわふわとろっとした食感が追い掛ける。
焼きたて熱々の特別感たるや。中にはドライプルーンが入っていて、その甘酸っぱさが生地の優しい甘さを引き立てる。
続いて気になるのはやはりジェラート。専門店の2種盛、単純にミルクとチョコではあるまい。
「お店の人に聞いてみたら?」常連の友人は知っているであろうに、にやにやしながらけしかけてくる。
オーナーの礒部さんは、チョコレート色の方を「ジャンドゥーヤチョコ」と教えてくれた。ジャンドゥーヤは、ヘーゼルナッツやアーモンドをペースト状にして練りこんだものだが、ここのは練り込むだけではなく、さらにナッツを砕いたものもトッピングしている。クリーミーなのに香ばしい。
乳白色の方は……と尋ねると、「オリーブオイルですね」。
オリーブオイルの本場イタリアのお菓子とはいえ、本当ですか、礒部さん。
しかし、一口運ぶと感動がやってきた。なんとフレッシュなことだろうか。
イタリア料理によく添えられる柔らかいパン・フォカッチャには、オリーブオイルがたっぷりと練りこまれていて、噛むとじゅわっとオリーブの味が口に広がる。ジェラートが口の中で溶ける時にオリーブの風味を感じるのは、フォカッチャを食べる時の感覚に近い。
熱々のファーブルトンに冷え冷えのジェラートをつけ、溶かしながら一緒に口へ運ぶ。
今度は、生クリームのコクと金柑の爽やかさを合わせてみる。一皿で何通りもの組み合わせを楽しむことができるのだ。
「なんか、本当に美味しいもの食べると、笑えてくるよね。」
お行儀が悪いが、口いっぱいに頬張りながら、ぐふふと笑う私。
「わかるわかる。」友人は完食間近だ。
ファーブルトンの一欠片で、お皿に残ったジェラートをきれいに拭い、最後の一口を堪能していると、絶妙なタイミングで熱々の白湯がコップに注がれた。少し冷えた口の中がさっぱりと温まる。見事な締めくくりに思わず拍手。急遽決まったおやつの時間は、まるで逸品料理を堪能したかのような時間となった。
帰りの信号待ちで「ファーブルトン」とスマートフォンで検索すると、フランス・ブルターニュ地方のお菓子で、小麦粉、砂糖、牛乳、卵などを混ぜて焼いたパンプディングのようなものであることが分かった。プルーンやレーズンなど、家にあるものを入れて気軽に作る家庭のおやつのようだ。
「おやつにしようか」と、思い立った時に作られているカジュアルな異国のお菓子を、見事に贅沢な一皿に仕立て上げた「GELATI BRIO」恐るべし。
それでいて敷居が高いわけではなく、カウンターでさくっと食べて帰れるのも良い。
お店では、シーズン毎にこういったデザートプレートを出されているようだが、期間やタイミングはその時々。出会えるチャンスがあった時に食べられる特別なおやつ、幸運にも、堪能させていただいた次第。
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GELATI BRIO
instagram @gelatibrio
〒980-0811 仙台市青葉区一番町一丁目6−23
営業時間 (冬期/4月末まで予定)
火~木 12:00-19:00
金 12:00-20:00
土 11:00-20:00
日・祝 11:00-18:00通常営業時間
火〜木 12:00-20:00
金 12:00-21:00
土 11:00-21:00
日・祝 11:00-18:00定休日 月曜日