くらしとおやつ フルーツ・アラカルト
おやつが好きだ。
どんなに疲れていても、少々嫌なことがあっても、
おやつがあれば、大抵のことをリセット出来てしまう。
そんなおやつについて、エピソードや私自身のこだわりを綴っていく。
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フルーツ全盛期がやってきた。
さくらんぼ、ぶどう、ブルーベリー、ラズベリー……
夏のフルーツは小柄で可憐で華があって、きっと女の子なら間違いなくモテるであろう面々だ。
「先生、バナナはおやつに入りますか?」
遠足前日、今でも教室では子どもたちからそんな質問が出るのだろうか。
これに関してはきっと、未だに先生は答えに詰まってしまう質問なのだろうけれど、このおやつの連載では即答します、えぇ、フルーツはおやつです。
はじめに断っておくと、甘い物が大好きな私、ダイエットや健康のために、クッキーやケーキの置き換えとしてフルーツを食べている、ということではない。
なぜなら、干しぶどうはクッキーに入れるし、生のフレッシュなベリーが主役のタルトがショーケースに鎮座しているというのだから。クッキーやケーキの並びに、フルーツも置いてしかるべきなのである。
なんてちょっと偉そうに述べたが、今回は季節の旨味が凝縮した果物について、「フルーツ・アラカルト」と題して書いていこうと思う。
7月上旬、山形県東根市にある野菜の直売所「よってけポポラ」に行ってきた。
普段から野菜は県内の直売所で買うことが多く、スーパーでは見ることがない果物や地元の野菜を手に入れられるのが嬉しい。
値段が均一で、年中食べたいものを手に入れることができるスーパーはとても有難いが、直売所や市場のように、季節の移ろいを手に取るように感じられる場所での買い物は、季節感が薄く、何かと塞ぎがちなニュースの多い今、とても大切な場所だと感じている。
「よってけポポラ」はとにかく新鮮で野菜の種類も豊富、とは聞いていたが、駐車場に入った瞬間、車の多さと人の多さにびびっときた。ここは凄いぞ、と。
「よってけポポラ」の凄さは、さくらんぼにあった。
広い売り場には、あらゆる種類のさくらんぼが、袋、パック、箱売り、それぞれのラインナップで並んでいて、多くの人は箱買いしている。その数平均2~3箱。購入したさくらんぼはそのまま宅配便で送れるようになっていて、おそらく親戚や知人への贈答用にしている様子だ。
私は箱買いこそしなかったけれど、よりどりみどりなさくらんぼを大人買いした。
デパートで数千円する佐藤錦も、ここでは山ほど入って1袋200円程。黄色いさくらんぼやアメリカンチェリーのような黒っぽい赤色をした品種もある。産直好きとしては、笑ってしまうくらいの宝の山なのであった。
帰ってから数日は、家でさくらんぼ祭りだった。
ざるにあけた佐藤錦を水で洗い、お皿にたっぷり盛りつける。赤みがかっただいだい色は、水滴をはらんでつやつやと光り、まるで小さなこどもの赤らんだほっぺのような素朴な可愛らしさがある。口に入れて噛むとぷちっと皮がはじけ、ぽい、ぽい、幾つでも食べられる。しつこくない甘みの果肉が嬉しい。
さくらんぼは傷みが早いので、残ったものはコンポートにした。
種を取ったさくらんぼを鍋でグツグツ煮込む。さくらんぼが十分甘いので砂糖は少しだけ。白ワインを足すとうんと香りがよくなる。粗熱をとって冷ましたら、きれいな容器に入れて一週間ほど楽しむ。
ヨーグルトに入れても美味しいし、ケーキやマフィンに入れて焼いても甘酸っぱさが増して、とても良いアクセントになるのだ。
今年の初夏は、例年以上にさくらんぼを堪能することとなったのだが、夏の時期に私が最も楽しみにしている果物は、プラムである。
鮮やかな紅色をした丸い果物で、桃よりも二回りほど小さく、夏になると透明なパックに5~6個セットになってスーパーに出回る。
もちろん、これも「よってけポポラ」で入手済み。
プラムは冷蔵庫でしっかりと冷やして、そのままがぶっとかぶりつくのが大正解。
そのまま剥かずに食べられるつるんとした皮はハリがあり、見るからに健康的で、歯を立ててかぶりついた瞬間、じゅわりと黄色の実が姿を現す。
その瞬間口いっぱいに広がるプラムの果汁。皮の近くは少し酸っぱいが、実の中心にいけばいくほど甘く、搾りたてのジュースのような香気が鼻を抜けていく。
1~2個はあっという間、できれば一度にパック丸々食べたい。それくらい後味が爽やかな果物だ。
さて。フルーツ祭りはこれにて閉幕か。
いえいえ。冷蔵庫の中から私がいそいそと取り出すのは、ブルーベリー。
こちらも山盛り1パックたったの300円。何たる幸せ……
紺色の小さな実はなんてシックな雰囲気なのだろう。それでいて華やかである。手に乗せてしばし見とれてしまう。
生でいただくブルーベリーはとても控えめな甘さだが、熱を加えると鮮やかな紫色の果汁が溢れ出し、甘酸っぱい風味に変わる。冷凍のブルーベリーにはないフレッシュがゆえ、毎年ブルーベリーが出回る季節を心待ちにしている。
さくらんぼがあどけない可憐な少女だとすれば、
プラムは健康的な色気をはらんだ思春期の女の子。
ブルーベリーは3つの中では一番奥ゆかしいが、いろんな魅力を秘めた女性。
どれが一番とは言い難い。それぞれに魅力的でどれを食べても幸せな気持ちになる。
アラカルトとは、一品料理の意味。
どうですか皆さん、調味料や他の材料を加えていなくても、そのままで完成されているおやつ、それがフルーツ。まさに一品料理として拍手を贈りたい。
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