くらしとおやつ「CHOOSE FOODS」のお米のクッキー
おやつが好きだ。
どんなに疲れていても、少々嫌なことがあっても、
おやつがあれば、大抵のことをリセット出来てしまう。
そんなおやつについて、エピソードや私自身のこだわりを綴っていく。
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4月から5月にかけて、仙台の定禅寺通りのケヤキ並木が一年で一番美しい季節だ。
小さな新芽が芽吹き、やがて一斉に鮮やかな黄緑色の葉がつきはじめる。
若葉は葉が薄く、そこに日差しが透けて、柔らかな光がゆらゆらと揺らめく様子を見ていると、自然のエネルギーが体中に満ちていくような気持ちになる。
5月下旬にもなれば、ケヤキの葉が色濃く大きくなり、それらが折り重なってできる陰影もまた美しい。
この時期に美しいものといえば、田んぼである。
米どころの宮城県、仙台市中心部から数十分車を走らせれば田園風景が広がっていて、日差しが反射してきらきらと光る水田は、なんとも清涼感がある。
実家がお米農家の知人は、毎年田植えの時期に親戚一同が集まり、男性は力仕事、女性は小さなこどもたちの面倒を見たり、料理を振る舞ったりして過ごすという。
豊作を願って働く時間は、身近な人との団欒の時間でもあるようだ。
私の初めての田植えは数年前。大崎市古川の田んぼで手植えを体験させていただいた。
靴を脱いで、靴下を脱いで、田んぼに素足を滑り込ませた時の感覚は忘れられない。日差しの下、ひんやりとろりとした泥の感触が足を包み込む。
小学校のプール開きの日、外気とは打って変わってひやっと冷たかった水。そこにそろりと体をうずめた時のどきどきとした感覚を思い出した。
ひやっとするのは最初だけ、慣れてくれば気分が高まるプール同様、田んぼの泥の感触も、一度慣れれば病みつきになる。
苗を手に持ち等間隔で植えていくが、まっすぐ揃えて植えるのはなかなか難しい。オートメーション化で、今はどの田んぼも機械によって植えられているが、それでもプロの方の手植えは、驚くべきスピードと正確さだった。
田植えの大変さを実感すると、お米を食べる喜びはひとしおだ。
特に、お米が炊けた時のほんのり甘い香りがとても好きで、炊飯器の蓋を開けた瞬間の香りを胸いっぱいに吸い込むと幸せな気持ちになれる。
蒸気をまとってつやつやと光るごはんを茶碗によそい箸で口に運ぶと、お米が主食の日本に生まれ育ってよかった、と、心から思うのだ。
さて、そろそろおやつの話に移ろう。
私が出会ってよかったと思うおやつの中に、「CHOOSE FOODS」のお菓子がある。
「CHOOSE FOODS」のお菓子は、世の多くのお菓子に主成分として使われている卵・バター・牛乳などの動物性食品が使われていない。そして、小麦粉ではなく、お米を製粉した米粉が使われている。
「CHOOSE FOODS」のお菓子を作る宍戸由佳さんに初めてお会いした時、名刺代わりにと頂いたクッキー缶の贈り物は忘れられない。
シャイで控えめな印象の宍戸さんだが、一度お菓子の説明をはじめると、目がきらきらと輝いてこどもの様で、地元の食材が手に入るまでの経緯、実際に材料として使った時の印象まで、話は多岐に渡る。
そういった予備知識を入れなくとも、宍戸さんの作るクッキーの味わい深さは確かだ。
バターと牛乳をたっぷりと使ったコクや、バターを塗って焼いた表面のツヤといった、従来のクッキーの醍醐味と比較するのは野暮。
さくさくでほろっとした食感はクッキーの美味しさそのものだが、口の中にしつこい油分は残らず、これが米粉のお菓子の美味しさなのだ、という新しい発見がある。
クッキーの味は味噌や桑の葉、スペアミントなどなど……自然素材で優しい味と思うなかれ。自然のものだからこその野趣や強さを感じる味で、これこそが宍戸さんのお菓子を好きな一番の理由だ。
「CHOOSE FOODS」のお菓子は、宍戸さんがお一人で作っているため、作れる分を作れるだけ、イベントなどで販売されている。
確かな美味しさとお人柄でその人気はうなぎ登り、手に入れるのが困難になりつつあった。
そんな中、宍戸さんがこどものような目をきらきらさせて、報告してくださった。
「素敵なお店にクッキーを置いてもらえることになったんです」と。
緊急事態宣言が解かれた宮城県、久しぶりの晴れ間、荒井の「KEYAKI COFFEE」に訪れた。
木のぬくもりが感じられる店内には、宍戸さんのクッキーが並べられている。
多くの方にその美味しさを味わってほしいから、今回はクッキーを食べるのは我慢。
コーヒーをテイクアウトして、軒先のウッドデッキで一休みする。お店の方が丁寧に抽出してくださったコーヒーは、しっかりとした飲み口でありながら、最後に爽やかな甘酸っぱさがやってきて、今の季節にぴったりだ。
デッキの回りに植えられた木々には青々と葉が茂り、時々ふく風が心地よい。一瞬で寛いだ気分になる。
デッキにいた15分程の間にもお客さんが途切れない。店名の由来通り、“ケヤキの木のように地域に根付き、愛される” お店であることが伺える。
新しい住宅地やそれに伴う大型施設の建設で開発が目覚ましい荒井エリアだが、田園風景が残っているのがほっとする。
「KEYAKI COFFEE」の帰り道、お店の近くの田んぼには、植えられたばかりの青い苗が空に向かって伸びていた。
秋にはしっかりと首を垂れる稲穂になりますように。
今日もまた、食卓で美味しいごはんをいただけることに感謝しよう。
そして、食後に「CHOOSE FOODS」のお米のクッキーをいただいて、おやつでもお米を味わえるのなら、米どころ宮城県民として最高の幸せではないだろうか。
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CHOOSE FOODS
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●「お米のクッキー」の販売(2020年5月現在)
「KEYAKI COFFEE」
〒984-0017 宮城県仙台市若林区なないろの里 2-27-15
公式Webサイト●その他のイベント・販売情報
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