くらしとおやつ 「コーヒーとおやつの店 andMore(アンドモア)」のガトーショコラ
おやつが好きだ。
どんなに疲れていても、少々嫌なことがあっても、
おやつがあれば、大抵のことをリセット出来てしまう。
そんなおやつについて、エピソードや私自身のこだわりを綴っていく。
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昨年、塩竈に新しいお店ができた。
ご夫婦がはじめた「コーヒーとおやつの店 andMore」。
“おやつ”という言葉が入った店名からして魅きつけられ、近々行こうと決めていた。
ある平日、塩竈の近くまで行くことがあったので、「andMore」に寄ることにした。
うっすらと空が茜色に染まる夕暮れ、本塩釜駅に到着。
閉店までの小一時間はゆっくりできそうだ。
本塩釜駅周辺は、昔ながらの建物と新しいお店が立ち並び、歩いていて飽きない。目指す「andMore」は通りの一角に位置していて、窓からは暖色の優しい灯が漏れていた。
扉を開けると、落ち着いた色の木の床やテーブルが並ぶ店内。
中央にはコーヒー豆の麻袋でくるんだ鉢の観葉植物が置かれ、空間のアクセントになっている。
平日の夕方ということもあってか、店内にはお客さんが一人。
私は、店内を一望できる角の席を選んだ。
ケーキはカウンターのガラスケースから選ぶ。ざっと4~5種類。ふむふむ。
お店のメニューもSNSの美しい写真で事前予習できる時代、どんなラインナップか私自身も予習済みだが、ガラスケース越しに本物のケーキを眺める喜びといったら!
ケーキがすぐ目の前にある高揚感、
それでいてガラス一枚の隔たりに、待て、と言われているかのような距離感。
決めた、今日はガトーショコラだ。
ガトーショコラは、チョコレート、小麦粉、メレンゲなどをさっくりと混ぜ込み焼き上げたケーキだ。
個人的には、圧倒的に「しっとり、どっしり」食感が好みで、焼けたガトーショコラをしっかり冷やしてあることが重要。
テーブルに運ばれて来たガトーショコラには、とろりとラズベリーソースがかかり、ホイップされた生クリームがお行儀よく添えられている。
フォークをショコラに当てて、下ろす……
この時、すとん、と抵抗なくフォークがお皿に落ちてしまうと、「あ、そのタイプね」と若干冷静になってしまう自分がいるのだが、ここのは手応えあり。
力をそこそこ込めても、フォークがショコラを切り込むスピードは緩やかだ。
口に運ぶと食感はしっとり、じんわりと濃厚なチョコレートの味。
ガトーショコラをお供に、自分だけの至福の時間の幕開けだ。
ふと顔をあげると、向かいの窓辺の席の女性に目が行った。
私より先にこのお店での時間を過ごしている年配の女性、年の頃は70代くらいだろうか、小柄な体を椅子にうずめて物思いに耽っている。
テーブルには、食べかけのドーナッツとコーヒーカップ。
おもむろに、彼女はドーナッツの最後の一欠片を口に入れ、カップの残りを飲み干して、満足そうにお店のご主人に向かって手を挙げた。
「すみません、もう1セット、同じものをくださる?」
程なくして、彼女のテーブルに2度目のドーナッツとカップが運ばれて来た。カップの中を覗き込み、ぱっと笑顔になる。
「今度はうさぎ、可愛いわね」どうやらラテアートのようだ。
そうしてその年配の女性は、私がお店を後にする時も、じっと物思いに耽っていた。
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おやつが好きだ。
おいしい、嬉しいなどは言わずもがなだが、一番の理由は、おやつにはそれを食している「時間や空間」も含まれているように思えるから。
あの日、ゆったりと心地良い時間を過ごすことができた空間。
年配の女性に、「もっと」と言わしめた「andMore」の美味しいおやつ。
自分だけの時間に浸れるお店が塩竈にできたことが嬉しい。
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コーヒーとおやつの店 andMore
instagram @andmore2019.09
〒985-0052 塩竈市本町2-13 1階
営業時間 10:00-18:00
休業日 不定休※専用駐車場なし / お店の向かいにコインパーキングあり
※ケーキは日替わり